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ねずみのよめいり

 
 山田さんちのやねうらの、ネズミ一家は、おおいそがしです
 今日は娘ネズミのおよめいり、とってもめでたい日なのです。
 朝から親せきや知りあい、たくさんのおきゃくさんが、おいわいを持ってきました。
 
 娘ネズミは、はなよめいしょうに身をつつみ、いつになくきれいです。
 父ネズミは、おきゃくさんのあいさつで、頭をさげてばかりです。
 母ネズミは、りょうりのよういに走りまわっています。
 兄ネズミは、よめいりどうぐのよういです。
 ネズミ用のタンスとけしょうだい、そしておさらやなべ、おふとんと、それはたくさんありました。
 
 とつぐところは、おむかいの佐藤さんちのやねうらです。
 相手は、そこのネズミ一家の長男です。
 
 こんなにめでたいことは、めったにないので、りょうりはとてもごうかです。
 山田さんちのれいぞうこにあった、チーズとソーセージがつくえの上にならんでいます。
 りょうりは、おきゃくさんにふるまわれました。
 そして、みんなではなよめをかこみ、思い出話に花をさかせました。
 
 とうとうしゅっぱつの時がやってきました。
「いよいよね」
 はなよめは、生まれた家にわかれをつげました。
「しゅっぱつするぞ」
 父ネズミをせんとうに、ネズミのぎょうれつがすすみはじめました。
 
 ネズミのぎょうれつは、やねうらを出ました。
 そこにはひさしがありました。
 ぎょうれつは、ほそいひさしの上をすすんでいきました。
 
 はなよめは、きものにぞうりなので歩きにくそうです。
 はなよめどうぐをはこぶ兄ネズミも、おもくて歩きにくそうです。
 ひさしの上をすすんで、雨といのところまでやってきました。
 雨といの中を、はなよめは、汚れないよう、きもののすそを気にしておりました。
 
 母ネズミは、太ってますが、引っかからずにおりることができました。
 父ネズミは、こしをいためないように、そおっとおりました。
 兄ネズミは、にもつを落とさないようにひっしです。
 
 雨といをおりると、そこはみぞです。
 みぞは、となりの佐藤さんちまでつづいています。
 ネズミのぎょうれつは、山田さんちのにわをでて、佐藤さんちのにわに入りました。
 みぞのなかにはいると、雨といへといっちょくせんです。
 佐藤さんちは、お金持ちなので、にわはひろいです。
 雨といまでけっこうきょりがあります。
ザァーー
 とつぜん音がしました。
 どうやらあらいものをしているみたいです。
「みんなー、みぞからでろ」
うしろから、兄ネズミがさけびました。
 このみぞは、はいすいこうとつながっています。
 まもなく、きたない水がながれてきます。
 こんな水につかったりしたら、だいなしです。
 ネズミのぎょうれつは、いそいでみぞからでました。
ザァー
すぐに、あわだらけの水がながれてきました。
「あぶないところだったなぁ」
 父ネズミが水をながめていいました。
 
 おかげでよていが変わってしまいました。
 そうなると、大きな問題が出てきます。
 目のまえには、大きな犬がいすわっているのです。
 
 しかたありません。犬のうしろを気づかれないように歩きはじめました。
 ものおとをたてないで、そおっと歩きました。
 犬は、まったく気づくようすはありません。
 そのときです、
ゴホンッ
父ネズミがせきばらいをしてしまったのです。
 ものおとに気づいたのか、佐藤さんちの犬が、むくっとおきました。
 みんなにきんちょうが走りました。
 ところが、犬は、なにごともなかったかのようにまたねむりはじめました。
 とりあえず、みんなホッとしました。
 ふたたび、ネズミのぎょうれつがすすみはじめました。
 
 雨といにつくと、上へとのぼりはじました。
 ここはさいごのなんかんです。
 すべりおちてはいけません。
 父ネズミが、はなよめのおしりをしたからささえました。
 母ネズミは、自分のおもさでせいいっぱいです。
 みんながひさしに上がると、あらかじめむすんであったひもで、はなよめどうぐをひっぱりはじめました。
「よいしょ、よいしょ」
 みんなが一つになって、こえをあげました。
 にもつを上げると、ネズミのぎょうれつは、やねづたいにすすみはじめました。
 
 やねうらのいりぐちには、相手の弟ネズミがまっていてくれました。
「ようこそ、おまちしておりました。」
「今日はよろしくおねがいいたします。」
父ネズミがいいました。
「こちらへ」
 みんなは、弟ネズミのあとをついていきました。
 
 なかにはいっていくと、相手のかぞくがそろっていました。
「よくきてくれました、今日はめでたい日です。」
「これから娘がおせわになります。」
 父ネズミが、ふかく頭をさげました。
 
 いろいろありましたが、ぶじにたどりつけました。
「これからは、ぼくがまもります」
 はなむこのネズミがいいました。
「おねがいします」
はなよめははなむこに手をとられ、さいだんのまえへと歩きました。
 みんなのまえで、二人は、ちかいのことばをいいました。
「どんなにつらくても二人できょうりょくして、いいかていをつくっていきます。」
 二人は大きいはくしゅにつつまれました。
 
 そして、さかづきをかわし、はれてふうふとなりました。
「お父さん、お母さん、お兄さんお元気で」
 娘ネズミは、赤い目をしていいました。
 母ネズミは、ハンカチで目をおさえています。
「なにかあったらかえっておいで」
 父ネズミは、少しさみしそうです。
 
 父ネズミは、ほんとうは、なきたくてしかたありません。
 でも、けっしてなみだをながしませんでした。
 兄ネズミは、ないている母ネズミのかたをだきました。
 
 ネズミのぎょうれつは、佐藤さんちのやねうらをあとにしました。
 そこにはもう、娘ネズミのすがたはありません。
 これからは、三人だけの生活です。
 
 娘ネズミは、これから、あたらしい生活がはじまります。
 くよくよなんてできません。
 そして、ねずみのぎょうれつに大きく手をふったのでした。